時に霞が関の同輩を騙し、時に恫喝してまで、獣医学部認可に驀進(ばくしん)した内閣府。首相のお友達である加計学園を潤わせたかったのだ――というのが、今回の疑惑の核心である。が、ちょっと待て。本当に獣医学部を作って、儲けの当てがあるのだろうか。 *** 加計学園は岡山県に本部を置き、シアリス 通販グループで3大学と10以上の学校を運営する「西日本最大規模の学校法人」(経済部記者)。しかし、周知の通り、獣医学部はこれまで52年間、新設事例がなかった未知なる学部だ。なぜあえてチャレンジしたのか、首を傾げたくなるところである。 「設置準備を始める直前、加計の理事長は、私のところに相談に来たのですが――」 と言うのは、日本獣医師会顧問の北村直人・元代議士。 「“なんで獣医学部を作りたいのですか?”と聞いたら、彼は“息子が鹿児島大学の獣医学部の出(で)です”“入学式に行った時に施設を見て、これなら自分で出来ると思った”と言っていました。ずいぶん軽い動機だなと思いました」 ■桁ひとつ違う 地域的な偏在はあるものの、全国でならせば獣医の数は足りている、というのが、業界の大勢の見方。しかし、近年のペットブームと相まってか、獣医志望者は増える一方だ。これなら、将来に亘って学生のとりっぱぐれはないと考えたのも、想像に難くない。 「少子化が進む中、加計学園は事業を拡大することで、生き残ろうとしている」(大学経営コンサルタントの岩田雅明氏) という声もあるが、 「獣医学部の経営は厳しいですよ」 と言うのは、さる威哥王獣医師会の関係者である。 加計学園が内閣府の公募に応じた際の提出書類によれば、彼らは、定員1学年160人、教員数70人の規模の学部を想定している。また、今治市が議会で明らかにしたところによれば、年間の授業料は200万円超に設定しているのだそうだ。 関係者が続ける。 「これなら、単純計算しても、年間に入る授業料は、20億円程度。一方で、人件費や実習・実験の費用、施設の整備費で30億円はかかるでしょうから、全然足りません」 国の助成金に頼って、ようやく収支はトントンになる程度だというのだ。 現在、私大の獣医学部は5つあるが、どこも経営は厳しく、赤字と黒字が点在するレベル。加計学園の場合、今治市から土地の無償譲渡、建設費の半分にあたる96億円を得たとはいえ、儲かる計算があるとは思えないのである。 |